【インタビュー】スタイレム瀧定大阪株式会社 坂本 和也さん
野菜でも、花でも、苗木でも、好きなものを植えて成長を楽しむことができる土です。
「TUTTI」は「緑を増やす、未来へつなぐ」をテーマにしたスタイレム瀧定大阪株式会社が進める「 PLUS∞GREEN PROJECT(プラスグリーンプロジェクト)」の一環。
世界でも大きな課題となっている衣類やポリエステル繊維の廃棄。
繊維商社のスタイレムでは捨てるという概念を捨て、循環させ、緑を増やしていくという活動にチャレンジしています。
プロジェクトの中心人物、坂本さんのインタビュー前編をお届けします。
「TUTTI」を始めたきっかけを教えてください
もともと徳島でお付き合いのあった縫製工場さんがあって、その縫製工場の社長さんがアースコンシャスさんとスタイレムをつないでくれました。
当時弊社としては廃棄について悩みを抱えていました。扱うテキスタイルは5000マーク以上あります。非常にたくさんの量を持ち、物流を動かしている中で、もちろん、廃棄したくはないけれど、どうしても廃棄しないといけない部分が出てきてしまう。
廃棄ではなくリサイクルして、きちんと循環させる仕組みを作れたらいいなと悩んでいるときに、アースコンシャスさんと出会うことができました。
その出会いが「PLUS∞GREEN PROJECT(プラスグリーンプロジェクト)」へとつながっていくわけですか?
そうですね。弊社としては繊維のリサイクルに取り組んで、収集から開発、販売までをできたらいいなと。
「PLUS∞GREEN PROJECT(プラスグリーンプロジェクト)-緑を増やす、未来へつなぐ-」は、従来廃棄される衣類などのポリエステル繊維を培地としてリサイクルすることで、人々がサステナビリティに親しみを感じるライフスタイルの実現を目指すプロジェクトです。
このポリエステル繊維リサイクル培地は、アースコンシャスさんと近畿大学さんが長年の研究開発を重ね、その製造技術や効果を確立しました。
普段着用している衣料品などを廃棄するという概念を捨て、循環させ、緑を増やすことで、環境に良い活動をより多くの人々が感じるきっかけになればという願いを込めたものです。
このプロジェクトに園芸会社さんとして協力していただいたのはハンナさんが初めてでしたし、とても助かりましたね。
プレスリリースを出させてもらったり。やっぱり新しいことを始めるにあたって、御社の事例があったのは、異業種へアプローチするときの信頼を得やすい状況を作れたかな、と思っています。
近畿大学さんも参加されていますが、どのようなご関係なんですか?
「PLUS∞GREEN PROJECT」は産学連携です。アースコンシャスさんは生産、近畿大学さんは研究。私たちは企画と販売を担っています。
その中でポリエステル繊維リサイクル培地の生育実証用ハウスとして「STYLEM AGRI LABO(スタイレムアグリラボ)」を設営したのですが、その研究に関しても近畿大学さんに色々とご協力いただいています。
ラボを設営した目的としては研究とは別に「自分たちでやらないと、伝える際に説得力が足りない」という想いもありました。農業や園芸とは遠い業界の人間が、植物の栽培について語るわけですから、信憑性がないわけです。それを払拭したかったんです。
自分たちでやることでメリット、デメリットは明確に分かりますしね。作業性の良さや、汚れにくいとか。虫がつきにくいとは言っても、完全な農業をやるとなると、さすがに虫はつくよね…みたいなことを、お取引先様に話して、納得してもらえるようになりました。
プロジェクトの名前は坂本さんがお決めになったんですか?
一応(笑)
誰が見ても分かりやすくて、緑が増えるってことを伝えたかったんですよ。 ロゴのプラスとグリーンの間にある無限のマークが、「循環」をさりげなく意味しています。
緑にフォーカスしているのにも、いくつか理由があります。
緑を増やして未来へつなぐっていうのが、まずひとつ。
また身近な自然を関連付けることで、皆さんに親しみを感じてもらえるサスティナブルな活動にしたい、っていう想いもあります。
このプロジェクトを通して、 服を捨てる前に立ち止まって「これってもしかしてリサイクルできる?リサイクルしたら緑を増やせるんじゃないの?」みたいな感じに、共感してもらえる人が増えたら幸せです。
坂本さんにプロジェクトが一任されるまでの経緯を教えていただけますか。
タイミングですね。僕は2009年に入社して、約12年間ずっと生地の営業をしてきました。正直、新しいことにチャレンジしたかったという気持ちがありました。
直接、課長や役員、社長に面談などを通して想いは伝えていたので、「TUTTI」の話が出たときに「お前に任せる」と言ってもらえたのではないでしょうか。
社風としては風通しが良い分、ちゃんと実績や説得材料も必要にはなりますが、色々と検討してもらえた結果だったのかなと思います。
当時はどんな想いや目標を持ってスタートされたんですか?
当時はD2Cに興味がありました。ほとんど知らないことばかりだったので、自分の知識を増やしていきたかったんです。
そんな中「TUTTI」の話が出てきたんです。
「TUTTI」については多少なりとも知っていたものの、もっと分かっていないとイケナイと思い、まず徹底的に知識と理解を深めました。
コスト分解だったり、特許の内容だったり。製造の現場にも行って、その基盤となる部分についても学びました。
「TUTTI」を事業として成り立たせるために、まずはプロジェクトとして立ち上げ、ブランコンセプトを確立させることに力を入れました。
「何のための事業、活動なのか?」「何を軸に自分たちは動いているのか?」を明確にするために、そこは結構時間をかけました。4ヵ月くらいは掛かったと思います。
そのおかげで今もブレずに走り続けられているのは、本当に大きいですね。
どのような体制でプロジェクトを進められているんですか?
今は3人でやっています。僕が所属しているのはR&D室になります。
※R&DはResearch and Developmentの略で、一般的には「研究開発」を意味しています。
ブランディングで心がけていることってありますか?
初見で誰もがわかりやすいことです。見た目のオシャレさや商品の利便性、さらに情報を整理して統一することにより興味を持ってもらいたいと思っています。次にストーリーを通してサスティナブルなことを身近に感じてもらい、共感が生まれるような工夫をしています。
「TUTTI(トゥッティ)」は、従来なら廃棄されてきた衣服などのポリエステル繊維をリサイクルした「繊維から生まれた土」。野菜でも、花でも、苗木でも、好きなものを植えて成長を楽しむことができます。
ふだん着用している衣料品などを廃棄するのをやめよう、循環させて緑を増やそう。そんな思いから、「TUTTI」が誕生しました。
オーケストラのメンバーが全員で合奏することを、『TUTTI(トゥッティ)』と言います。そこにいるすべての人が演奏することで、素晴らしい音楽が生まれてくる。
「TUTTI」も、そんな存在でありたいと願っています。ブランドロゴにリピート記号(:II)がついているのは、リサイクルすることで資源を大切に循環させていきたいから。オーケストラの合奏のように、そこにいる誰もがこの循環に参加することで、環境にやさしい未来を生み出すことができます。
1年目の達成度としてはいかがですか?
実例として小さいものから、大きなものを含めて60件以上積み上げられたんで、それなりの成果は出せたと思ってます。プロジェクトを継続させて収益を出す、というのが第2ステージとしての課題ですね。
※「TUTTI」はスタイレム瀧定大阪株式会社が展開するポリエステル繊維リサイクル培地の登録商標です。
ー後編へ続くー
坂本 和也さん
アパレル業界にいながら食糧問題にまで目を向ける若きブランドオーナー。
プロジェクトリーダーとしてチームを牽引し、コンセプトデザインも手掛ける。
スタイレム瀧定大阪株式会社
https://www.stylem.co.jp/
150年を超える歴史を持つ繊維専門商社。テキスタイル、原料、アパレル製品、ライフスタイルの4つの分野で事業を展開。
テキスタイル事業において環境や社会に配慮したテキスタイルとマテリアルを「ECOARCH®(エコアーチ)」と総称し、環境配慮、オーガニック、森林保護、リサイクル、動物愛護の5つのカテゴリーに分類し、展開しています。
「花とみどりが織りなす、暮らしの手引き」をテーマに、大阪と東京で展開している花屋です。
誕生日やウェディング、開店祝いなど、あらゆるシーンでお花や植物のご提案をさせていただきます!
ぜひ、お店に遊びにきてください!
インタビュアー:溝手 筆者・編集:鈴木